子どもの英語教育法のひとつとして、近年聞く機会が増えた「おうち英語」。グローバル化が進む中、おうち英語に興味がある人も多いと思いますが、こんな疑問を持ったことはないでしょうか。
「英語が得意じゃない親でも、子どもに英語を教えられるの?」
「高い教材を買わないと、効果は出ないのではないか……」
実は、英語が得意でなくても、高額な教材を使わなくても、おうち英語は始められます。SNSなどで体験談を検索すると、親が英語が苦手でもおうち英語で結果を出した子どもはたくさんいます。
私自身は留学経験があるものの、海外の大学を出たわけでも英語教授法を学んだわけでもない、完全なノンネイティブ。27歳まではほぼ英語を話せませんでした。夫も海外滞在経験がありますが、私よりさらに話せません。
それでも、特別な教材を使わずに、娘は2歳半で「What’s this?」や「I want to open it!」などの文章で英語を話すようになっています。
この記事では、私の体験だけでなく、言語学・脳科学の研究や専門家の見解も交えながら、おうち英語の始め方・進め方・注意点を網羅的に解説します。
おうち英語とは?英会話教室との違い
おうち英語について改めて解説すると、一般的には「英会話教室や英語塾に通わずに、家庭の中で英語に触れる環境をつくる取り組みのこと」を指すといえます。
英会話教室との大きな違いは、「先生から教わる」のではなく「日常生活の中で継続的に英語に触れる」という点でしょう。レッスンの時間だけ英語に触れるのではなく、遊びや生活の延長で英語が耳に入ってくる環境をつくること。これがおうち英語の特徴です。
おうち英語のメリット
おうち英語・英会話教室の双方に良し悪しがあるものの、おうち英語特有のメリットとしては以下の3つが挙げられます。
- 通学の時間や費用がかからない
- 子どものペースに合わせて進められる
- 親子のコミュニケーションの一部として英語が入ってくる
まず、家庭で行うため教室への送り迎えや月謝が不要なので、時間的にも金銭的にも負担を抑えながら続けられるのはメリットでしょう。
また、決まったカリキュラムに沿う必要がなく、その日の興味や体調に合わせて、無理なく取り組めるのも家庭ならではの強みです。
そして筆者も感じる大きなメリットが、親子のコミュニケーションの一部として英語に触れられること。「勉強の時間」として身構えるのではなく、遊びや日常会話の延長で、自然に英語に取り入れられます。
こうした「気軽さ」や「続けやすさ」が、おうち英語が選ばれている理由のひとつといえるでしょう。
おうち英語に向いている子・向いていない子
いろいろなメリットがあるおうち英語ですが、正直なところ、おうち英語が合う子・合わない子はいます。
一般的に、動画や音楽が好きな子、絵本の読み聞かせを喜ぶ子は、おうち英語を取り入れやすい傾向に。一方で、新しい音や知らない言葉に強い抵抗感を示す子の場合は、無理に英語を聞かせるとストレスになる可能性があります。また、日本語でのコミュニケーションやこだわりが強い子に関しても、英語環境が苦痛になってしまうかもしれません。
まずは遊びの中で少しずつ触れる機会をつくるなど、楽しみながら無理なく取り入れられる工夫が必要です。
科学者や専門家が教える!おうち英語で大切なこと
手軽さやマイペースに取り組める点が魅力のおうち英語ですが、始める前に知っておきたい研究結果やメソッドがいくつかあります。
特に親は子どもの英語教育に詳しくない場合、独学で始めてしまうと何が正解かがわからず、挫折してしまうことも……。
ここでは、おうち英語で大切なことを、言語学者の研究なども参考にしながら解説していきます。
「聞き流し」だけでは効果が出にくい
子どもの英語教育に関して、「英語の音声を流しておけば自然に英語が身につく」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。しかし、「聞き流し」だけに頼りすぎるのはあまり効果的といえません。
アメリカの言語学者であるパトリシア・K・クール博士の研究によると、乳児の脳は音の情報を統計的に処理しているものの、その学習スイッチを入れるのは「生身の人間との社会的相互作用」だとされています。
実際の実験では、対面で語りかけられた乳児は音の識別能力が向上した一方で、オーディオやビデオの聞き流しだけでは、同じような効果が見られなかったという結果が。
つまり、動画や音声を流すだけでなく、親が一緒に見たり声をかけたりすることが、効果を引き出すポイントになります。
赤ちゃん期だからこそのメリットがある
パトリシア・K・クール博士の研究によれば、生後6〜8ヶ月ごろまでの赤ちゃんは、世界中のあらゆる言語の音を聞き分けられるとされています。その後、1歳頃までに母語に特化していき、他言語の音を聞き分ける能力は少しずつ下がっていくとのこと。
「赤ちゃん期に言語を聞き分ける能力がある」という話は、クール博士だけではなく、通信教育事業を展開する大手企業や英語発音矯正の専門家など、さまざまな分野で提唱されています。
もちろん、年齢に応じたアプローチに切り替えていけばおうち英語は続けられるため、この時期を過ぎたら効果がなくなるわけではありません。ですが、0歳の時期ならではの特徴やメリットがあることは、念頭に置いておくと良いでしょう。
親は「先生」より「サポーター」の立場でいる
おうち英語と聞くと「親が教える」というイメージを持つ人も多く、英語が苦手な人の場合はプレッシャーに感じることも……。ただ、おうち英語において、親がすべてを完璧に教えようとする必要はありません。
専門家の間では、親が「教える」役割を担うのではなく、英語に触れる環境を整え、子どもと一緒に楽しむ「サポーター」としての姿勢が大切だとされています。
英語に触れる時間が親子にとって心地良いものになれば、学習は自然と続いていくでしょう。たとえ保護者が英語に堪能でなくても、子どもとともに楽しむ姿勢を意識することが大切です。
年齢別!おうち英語の進め方ロードマップ
おうち英語は、子どもの発達段階によって、目的とアプローチを切り替えていくことがポイント。
ここからは、年齢別のおうち英語の取り組み方について、我が家の例も紹介しながら解説していきます。
0歳〜3歳頃まで:音・リズムに慣れる「土壌」を作る
この時期の目的は、英語の音やリズムに親しみ、「耳を育てる」ことです。
- 英語の歌・ダンスを一緒に楽しむ
- 英語の動画を見る(1回20〜30分程度を目安に)
- 英語絵本の読み聞かせをする
などのアクティビティを通して、英語に慣れさせるところからスタートします。
逆に避けたほうが良いのは、単語の暗記や、発音を細かく指摘すること。「正しく言えているか」ではなく、「楽しんでいるか」を軸にすると良いでしょう。
なお、次の段階に向けてフォニックスの動画でアルファベットの音に親しんでおくのもおすすめですよ。
我が家では、英語の歌や動画と数千円程度で買える英語絵本・おもちゃを中心に、生活の中で英語に触れる時間をつくっています。
詳しくは以下のnoteで紹介しているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
4歳〜小学2年生頃まで:フォニックスで「読める」を育てる
4歳〜小学2年生頃までは、アルファベットと音のルール(フォニックス)を学び、自分の力で読める喜びと自信を育むことにフォーカスします。
- フォニックス動画・音声教材を活用する(「Pinkfong」など)
- タッチペン付き図鑑や音声付き絵本に触れる
- ひらがなと並行してアルファベットを書いてみる
などのアクティビティを通して、音と文字のつながりを少しずつ強めていきます。
逆に避けたいのは、意味の確認攻めや、正確なスペルの強制。子どもの負担にならないようにするためにも、「正しく書けたか」ではなく「読めた・聞き取れたという成功体験を積めているか」を軸にすると良いでしょう。
特に、運筆や識字が発達する4歳後半は、「読む・書く」に入りやすいタイミングです。一方で10歳前後になると英語特有の音を聞き分けにくくなるといわれているので、耳と口が柔軟なこの時期に取り組んでおくのがおすすめですよ。
小学3〜4年生:成功体験に移行する
小学3〜4年生では、英語を使ったアウトプットに移行し、「自分の英語が通じた」という成功体験を積んでいきます。
- オンライン英会話に取り組む
- 日常生活の中で英語を使う場面をつくる(挨拶、簡単な会話など)
など、対人で英語を使う機会をどんどん増やしていきましょう。
逆に避けたいことは、文法を厳しく訂正することや、急にレベルを上げすぎることです。間違いを正すよりも、伝わったことを認める姿勢がその後の意欲につながりますよ。
おうち英語の具体的なやり方・使えるツール
ここからは、実際に家庭で取り入れやすい方法や使えるツールなどを紹介します。我が家でリアルに使用しているものもお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
英語の動画や音楽・歌
英語の動画や歌は、YouTubeなどで気軽に取り入れやすく、音やリズムに慣れるためにも有効な手段です。
子どもの年齢によっておすすめの動画や音楽は変わりますが、おうち英語の入門としておすすめできるのは以下の3つ。
- Ms. Rachel
- Super Simple Songs
- Pinkfong
それぞれ実写、アニメなど特徴が異なりますが、子ども向けの英語コンテンツがよくまとまっています。子どもや家庭の好みに合わせながら、取り入れていきましょう。
英語絵本の読み聞かせ
英語絵本の読み聞かせは、2〜7歳の間に行うことが、音韻認識(言葉の音を聞き分ける力)や、将来のリーディング能力の発達に効果的とされています。
絵本を選ぶときのポイントは以下のとおり。
- 子どもの興味に合うテーマを選ぶ
- カラフルでシンプルな内容のものを選ぶ
- 歌や動作を伴うものを選ぶ
特に子どもが英語絵本に興味を示さない場合、歌や動作が伴うものを選ぶ方法はかなり効果的です。我が家の娘も最初は絵本を手に取らなかったものの、音声付きの絵本を導入したことで、保育園後に真っ先にその絵本を読むまでになりました。
我が家で実際に使っている絵本等は以下のnoteで紹介しているので、興味がある方はぜひ覗いてみてください。
英語の知育玩具・スマートスピーカー
「自分で触ると音が出る」という体験は、子どもの興味を引き出すきっかけになります。日常生活で周りに英語がある環境を当たり前にするためにも、英語の音が出てくる知育玩具や、Alexa(Amazon Echoシリーズ)のようなスマートスピーカーを活用してみましょう。
英語だけでなく、日本語にも対応したバイリンガルトイなどは5,000円程度見積もっておけば簡単に手に入ります。
我が家の愛用品は以下noteで公開中。動画との連動方法なども解説しているので、ぜひ参考にしてください。
また、スマートスピーカーは英会話の相手としてはもちろん、親が子どもからの質問に英語で答えられないときに、即座に答えてもらうのにも重宝します。
安価なタイプだと数千円程度で導入できるため、英語環境作りに活用しましょう。
おうち英語の注意点
おうち英語には多くのメリットがありますが、進め方によってはデメリットが発生することも。ここでは、おうち英語に取り組むうえで注意したい点を紹介します。
「ダブルリミテッド」になることがある
過度に外国語環境を優先すると、母語(日本語)の語彙や表現力の習得が後回しになるリスクも……。状況によっては、複数の言語に触れることで、どちらの言語も年齢相応のレベルに達しない状態である「ダブルリミテッド(セミリンガル)」になってしまうため、注意が必要です。
おうち英語をやりつつも日本語での会話や読み聞かせの時間も十分に確保し、日本語の土台をしっかり作ることを意識しましょう。
子どもに学習を強要しない
親の不安や期待から、子どもの様子に関わらず学習を強要してしまうことを、「教育虐待」と呼ぶことがあります。これが行き過ぎると、英語そのものへの抵抗感やストレスにつながり、結果として学習意欲を下げてしまう可能性があります。
「今日は気分が乗らないみたいだから、また明日にしよう」というように、子どもの様子を見ながら柔軟に進めることが、長く続けるためのポイントです。
おうち英語に関するよくある質問
最後に、おうち英語に関するよくある質問とその回答をご紹介します。
Q. おうち英語は何歳から始めるのがベスト?
何歳からでも始められますが、言語を聞き分ける能力があるのは0歳期ならではのメリットです。また、研究では2〜7歳ごろの英語絵本の読み聞かせが、音を聞き分ける力の向上やリーディング能力の発達に効果的とされています。
Q. 親が英語が苦手でも大丈夫?
おうち英語をするにあたって、動画や絵本、アプリなど、親が発音を完璧にこなす必要のないツールが多くあります。大切なのは、親が「教える」のではなく、子どもと一緒に楽しむ姿勢です。自分も子どもと一緒に英語に触れながら、親子で楽しくレベルアップすると良いでしょう。
Q. 英語と日本語どちらもやって混乱しないの?
複数の言語に触れることで、一時的に言葉が混ざることはあります。しかし、母語(日本語)の時間をしっかり確保していれば、過度に心配する必要はないとされています。
Q. 成果が出るまでどのくらいかかる?
子どもによって差はありますが、短期間で成果を求めるものではありません。継続的に英語に触れる環境を保つことが、長期的な成果につながります。
Q. おうち英語に高額教材は必要?
必須ではありません。数千円程度の絵本やグッズ、無料・低価格の動画やアプリでも、十分に英語環境は作れます。まずは、無理のない範囲で始めてみると良いでしょう。
おうち英語は「環境づくり」が最も大切!
おうち英語のポイントを整理すると、以下の3点になります。
- 「聞き流すだけ」ではなく、親子のコミュニケーションを伴う形で英語に触れる
- 子どもの発達段階に合わせて、目的とアプローチを切り替える
- 高額な教材よりも、無理なく続けられる環境づくりを優先する
「親が先生になって教える」のではなく、「親子で英語に触れる時間を楽しむ」という視点を持つことが、おうち英語を長く続けるための一番のコツです。
まずは、家にある絵本や動画を、少しずつ英語のものに変えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
親子で楽しみながら、無理なく英語環境を整えておうち英語をスタートしましょう。

